第4回シムレーサーインタビュー:柳堀翔太
EVracing.jpでは、eスポーツで活躍するシムレーサーへのインタビューを敢行。第4回のシムレーサーは「柳堀翔太」さん。
現実とシミュレーターを両立させるハイブリッドeスポーツドライバー。
シミュレーターで培った技術を現実に生かし、リアルレーシング活動も行うレーサー志望のシムレーサー。
本インタビューの注目ポイント
- eスポーツ大会で優勝争いを演じた
- 実車のためにシミュレーターを最大限活用
- 複数のカートレースに参戦
- 4輪レースデビューを目指して活動中
-それでは、簡単な自己紹介からお願いします。
初めまして。
本名は柳堀翔太と申します。一部マルチプレイヤーではyanagiと言う名前で出ています。
今は23歳です。
-これまでに参加したEスポーツとその戦績を教えてください。
eスポーツとして挑戦した正式な大会は、去年中国の上海で開催されたERLアジアと言う、チャイナオートサロンのイベントとして企画された大会がありまして、それで3位でした。
賞金がかなりあるレースで、1位で150万円、2位が100万、3位が50万円で、4位以下でも10万の賞金が出るレースでした。
レース自体は、三周の短いレースを3回行う形式で、3回のレース全てで違う車を使うので出たとこ勝負みたいなルールでしたね。
最終の第3レースをスタートした時点で僕が2位を走っていて、そのまま2位でゴールすれば総合順位で1位を獲得できるという状況だったんですが、ファイナルラップの最終セクターで、どういう訳か単独でスピンをしてしまいまして、そのスピンで100万円を逃したと言う事件がありました。
コースはラグナセカで、コークスクリューと言われる有名なコーナーがありまして、その立ち上がりでした。
大会で使用されたソフトがプロジェクトカーズ2と言うソフトなのですけど、後ろのタイヤを縁石に乗せてしまって・・・
自分がいつも使ってるソフトがrFactor2なのですが、そちらと比べて縁石に乗せた時の動きが全然違いまして対応できなかったです。
プロジェクトカーズ2だとすぐにグリップが抜ける動きになるみたいで、自分がrFactor2でいつもやってる通りの感覚で縁石に乗せてしまい単独でスピンをしてしまいました。
スピンした時はもう生きた心地がしなかったのを覚えてます。そんなことがあり結局3位でした。
現状はe-sports大会はその一回しか出ていないですね。
なのでeスポーツでのデビューウィンを単独スピンで逃してしまう形になってしまいましたね。100万円と一緒に(苦笑)
その他で言うと、話がちょっと飛んじゃうんですけど、レーシングカードのダンロップネクストカップっていうシリーズ戦に出てた時に、シミュレーターでタイムアタックをするイベントが併催されたんですよ。
イベントには十何人かドライバーがいて、その中の上位2人だけがS耐のST-4クラス86のドライバーテストを受けることができるっていう特典がありまして、デュアルアタックに近い感じのですね。
そのイベントは無事に勝ち上がって特典を獲得できたんですけど・・・詳しくは実車関連でお話ししますね。
-次またEスポーツがあったら出たいですが?
そうですね、あればまた出たいなって思っています。
ただ、ソフトによって走らせ方も全然違ってきますし、難しい戦いになるとは思います。
中国の大会で使ったプロジェクトカーズ2はあんまり好きな挙動じゃなくて、タイム的には周りの人と比べてもそんなに速いタイムじゃなかったんですよね。
でもレースとかバトル中の駆け引きで上手くやっていけば上位は取れることがわかったので、この先またそういう機会があれば出たいなって思ってますね。
-マイカー含めて今まで乗った車や、走ったサーキットを教えてください。
まず乗ったことがある車は、「FJ1600」と言う入門フォーミュラマシン、そしてそれに近いウィング付の「スーパーFJ」っていうフォーミュラマシン、「VITA」と言うワンメイクレース用のマシン。
あと、さっきお話しした中国の大会で3位に入った特典として実車走行があったんですが、上海国際サーキットでKTMの「XBOW」に乗せてもらえたってところですね。
乗ったXBOWは市販されている車種ではあるんですけど、いくつかスペック違いのグレードがあって、自分が乗ったのは上位グレードみたいなマシンでGTウィングが付いていて速かったですね。
走行自体は5周くらいの短いものだったので、正式なリザルトとかはなかったです。
基準タイムを教えてもらっていたのですけど、一回もう終わりだと思って間違えてピットに入ってしまい、連続周回する前にチェッカーふられちゃって結局比較できなかったです。
マシンの動き自体はrFactor2でいつも乗ってる感じとそっくりでしたね。
XBOWは、オープンデフと言われる左右のタイヤが自由に動く機構で、挙動はコーナー手前でリアが滑る感じのオーバーが強い感触なんですけど、それをアクセルを微妙に踏みながらリア荷重をかけて曲がる感覚がけっこう似ていたと思います。オープンデフの動きとして近かったですね。
FJとかVITAとかスーパーFJも、タイヤの感触とか姿勢のコントロールとか近かったですね。
つくば1000の走行会みたいなイベントにインストラクターとしてプロのドライバーが来てたんですけど、スーパーFJでタイムを比較した時はほぼ同じくらいのタイムは出せましたね。
その時が初スーパーFJだったんですけど、やっぱりコントロール性や感触っていうか、動き自体も自分のやってるシミュレーターと近いものがありまして、「シミュレーターすごいな」って思った瞬間ですね。もちろんソフトにもよりますけどね。
4輪以外だとカートもやっていました。
カートに乗り始めたのは高校2年の時ですが中学3年からシミュレーターをやってまして、当時やっていたシミュレーターがレンタルカートに近かったのでそれなりに走れました。
それでレンタルカートの全国戦として開催されたレッドブルカートの大会に出ました。
大会には7500人くらいエントリーがあったみたいです。
最初に各地でタイムアタックをして、そのタイムアタックを勝ち進んだ800人くらいが各地方のサーキットでレースをして、勝ち進んだ120人くらいから更にレースで絞られて、最後25人くらいの人でジャパンファイナルを戦うっていう感じでした。
レンタルカートの大会ではありますが、そのジャパンファイナルに進出したことはありますね。
レーシングカートの経歴だと、ダンロップネクストカップっていうワンメイクレースに1シーズン出場しました。
今現役でFIA F4とかを走ってる選手もいたカート選手権ですね。
金銭的に豊かじゃないので1シリーズだけの参戦でしたけどね。
そのシリーズで先ほど少し話が出たシミュレーター部門と言うのがあって、シミュレーター部門の特典で、S耐ST-4クラスの86のドライバーテストを受けることができるはずだったんですけど、色々あってチャンスを逃してしまいました。それが今までで一番チャンスだったかなって思いますね。
カートだとあまり冴えなかったんですけど4輪だとしっくりくるので、86ドライバーテストのチャンスを逃したのは悔しいです。今は次のチャンスを信じてます。
あとは少し特殊な車ですけど、学生の頃に全日本学生フォーミュラ大会という競技に参加していまして、2017年~2019年に日本自動車大学校のドライバーとして参加しました。参加台数は100台以上で有名大学も多く出場してました。私がドライバーを担当した年では、2017年に歴代最高位の4位を獲得する事が出来ました。
-eスポーツに参加しようと思ったきっかけと現在参加している理由は?
そもそも自分自身がなんでシミュレーターを始めたかと言うと、実車の練習に使用するためだったんですよ。
シムレーサーを目指していた訳ではなく、シミュレーターで練習しているうちにシミュレーターの実力もついてきて戦えるようになった感じです。
それでこの前、偶然勧誘があり大会に出させてもらったと言うところです。
あまりeスポーツと縁があったわけでなく、勧誘されたのでちょっと出てみようかなって感じですね。
次に大会に出る時の動機としては賞金もそうですが、やっぱり特典ですよね。
実車のレッスンを受けれたり、テスト走行のチャンスがあるとか、そういうのがあればぜひぜひ戦いたいなって感じです。
-使っているシミュレーター(ソフトウェア)は?
メインでやってるのはrfactor2ですね。
その他だと最近はdirt rally2と言うラリーのシミュレーターもやってます。
先のわからない道をどうやって攻略したらいいかとか、そういうところの攻め方とか走り方を学ぼうかなと思ってやっています。
ラリーなので車をコントロールする練習にはなると思いますし、挙動自体もラリー系の中では良いのかなと思ってます。
グラベル等のアスファルトじゃないところも実際に少し走ったことがありますが、dirt rally2も現実と近い感じはしました。
あと最近はやってないですけど、iRacingはレースの練習をするために使ってました。
iRacingはrFactor2に比べたら挙動は万人向けかなって感じですが、レースのシステムがすごい充実してて、実車さながらのバトルや駆け引きとかがあってレースの練習としてやってましたね。
やりこんだことがあるのはこの3つですかね。
たまに気が向いたらグランツーリスモとかアセットコルサとかをやってますが、何かを練習するためではなく、普通に遊ぼうと思った時にやってるくらいです。
-オススメのシミュレーターは?
オススメの理由がいくつか分かれてるんですけど、車のコントロールとか挙動自体の練習をメインにやりたいならrfactor2がオススメです。
個人的に実車に一番近いって言うとrfactor2かなって感じですね。
dirt rally2に関してはアスファルト以外、土の上とか雪の上とかの練習にオススメです。dirt rally2にもアスファルト路面はありますけど、それはいまいちなんですよ。
なので雪とか土とか砂とかの上で走る練習には良いかなと思うのでラリーシミュレーターとしてはオススメですね。
iRaicngについてはレースの練習やバトル中の駆け引きとか、タイム自体が出ててもレースが上手くないと上位にいけないので、そういったところの練習にオススメです。
レース自体の練習はrfactor2だと開催数が少なくて回数を稼げないんですよね。
iRacingだとレースをするって言うのが目的なので、レース関連のシステムが凄い充実しててレースがすぐに開始できます。20分に1回くらいでやってくれるところもあります。
レース中の駆け引きの練習とかしたいのであればiRacingはオススメです。
-PCも含めて使っている機材を教えてください。
実はPCについてあまり詳しくないです(笑)
CPUはcore i5です。
中国大会の後にPCを買い替えましたが、以前のPCにはi7が入ってました。
ただ、価格的にちょっとi7だと高いなと感じて、買い替え前のPCと同じくらいのスペックでいいかなと思ってi5を買いました。
i5も進化して性能が上がったと聞いていましたので。
グラボはGTX1650です。最低限これだけあれば多分大丈夫です。
ただ、rfactor2公式DLCのニュル北は少しカクつきますね。それ以外のコースは最高画質でも普通に動いてくれてます。
モニターは21インチの1画面です。もうちょっと大きいのが欲しいなって思ってますけどね。
使ってるハンコンはT500RSです。今は絶版になっちゃってるみたいで、大事に使おうかなと思ってます。
シフトはスラストマスターの8速仕様のものです。
それ以外は素朴なもので、机は普通の机、椅子も普通の椅子でやってます。
ただ、普通にオフィス用の椅子で車輪が付いているので、スラストマスターのけっこう堅いブレーキペダル踏むと後ろにズルッって滑っていきます(笑)
でも車輪を取っちゃうとそもそも椅子の重心が高い影響で後ろにひっくり返っちゃうと言う・・・(笑)
なので椅子のすぐ後ろを壁にして、間取りを犠牲にして設置しています。
これで今は快適にプレイしているので、高級なシミュレーター機材は使わずにできています。
-参戦している国内外のサーバーは?
国内から言うと、一番お世話になってるのはrfactor2内でサーバーを開いているtanimaサーバーさん。
あとJSAサーバーさんのレースにも出ています。
rFactor2では今は基本的にその2つでレースをしています。
rFactor2の海外サーバーだと、WSSと言うシリーズに出ていました。
エントリー制で、全て英語で打ち込まないといけなくて、更にレースの開始時間が朝4時とかだったりするので最近は行けてません。ただ、ちょっと前までは寝る時間を犠牲にしてシリーズに出てました。海外レースなのもあって新鮮ではありました。
iRacingは最近はやっていないので、参加しているサーバーはそんなところです。
-自分のドライビングについてはいかがでしょうか?
立ち上がり重視やツッコミ重視って感じはなく、一番気を付けてるのはその車に合わせて走ってあげることですね。
車の走らせ方ってタイヤのグリップや路面のグリップでタイムがでるゾーンが変わってきますし、グリップが同じでも車のパワーが違ければラインは変わってきます。
それにパワーが同じでもかけられるトラクションが違くてもラインは変わってきますし、最速は常に変化し続けるものなんですよね。
自分のスタイルとしてはその車に合わせてあげたいって感じですね。
もちろん操作が苦手な車はあると思うので、その場合はその車で走り込んで自分に何が足りないのかを探します。
車に合わせた走りを見つけて感覚に落とし込むっていうスタイルでやってますね。
-今後の展望について教えてください。
一番は実車のレーシングドライバーになりたい気持ちが強いので、まずはそこを目指していきたいです。
もちろんシミュレーターも続けていきたいと思ってます。
Eスポーツの勧誘があれば出たいなと思いますし、eスポーツ大会となると、タイムやレースの駆け引きだけじゃなくて精神面も鍛えられると思うので、チャンスがあればぜひ出ていきたいなと思います。
お金はあまりないので、いきなりライセンス取って実車のシリーズ出て走ろうって言うのはできないので、上手く人脈とか、安く走れる機会を利用して自分の知名度を上げていきたいです。まずはそこからコツコツ上げていこうかなと思ってます。
今年から仕事が始まったので今のところは手をつけれてないですけど、今出ようかなと思ってるのはライセンスフリーで出れるマツダの耐久レースです。
S耐ドライバーでそこからステップアップした人もいるので、這い上がるには良いかなって感じですね。
そこで良い走りをして、目を付けてくれる人がいるかどうかって感じです。そのシリーズから人脈を広げていってやっていこうかなと考えています。
かなりお金がかかるので、そこらへんは上手くやっていきたいなと思ってます。
自分が走らせたときに「あいつ速いな」って言われるように、今はシミュレーターとかで技術を磨いて準備しています。
-最後に一言お願いします。
自分と同じ様に、シミュレーターはできるけど実際にレースをするお金がないっていう人は多いと思うので、そういう人たちにシミュレーターから実車に挑戦するチャンスがあることを示していきたいなと思っています。
Eスポーツレーシングドライバー ・柳堀 翔太(やなぎほり しょうた) ・年齢:23 ・千葉県柏市 ・主に使用している機材:T500RS ・主に使用している車種:ポルシェEGT、92年F1、NSX-R、MAZDA787B等 SNSアカウント Twitter:@GAP_gooyan(新たに始めました)