フォーミュラE ルーキーテストドライバー
マラケシュでのフォーミュラE第5戦が行われた翌日に、フォーミュラEルーキーテストが開催された。
フォーミュラEは現在、モータースポーツ界で最も成長を遂げているカテゴリーの一つであり、同時に多くのトップドライバーが参戦している。
競争力の高いカテゴリーではドライバーの能力はチームの成績に重要な要素であるため、各チームは早い段階から多くの若手ドライバーをテスト走行させる。
また、現在は車両間の性能が拮抗していることもあり、セッティング能力の高いドライバーも評価が高くなっている。
今回は次期フォーミュラEドライバー候補のドライバーも多く参加したルーキーテストで、どの様なドライバーが走行を行ったか確認していく。
目次
ヴァージンレーシング
「アリス・パウエル」
女性限定のWシリーズでレース活動をしている女性ドライバーの一人。
17歳でフォーミュラ・ルノーのチャンピオンシップを獲得した最初の女性となり、2012年には世界選手権であるGP3シリーズでポイントを獲得した最初の女性となった。
現在のフォーミュラEに参戦しているドライバーの中にも彼女と共にレースを戦ったことがあるドライバーが数名おり、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタとダニエル・アプト、そしてミッチ・エバンスと有力選手が並ぶ。
パウエルはサーキットでの仕事以外でも活動しており、モータースポーツ内での女性を支援することを目的とする「Dare to Be Different」(D2BD)と言う非営利組織の大使を務めている。
「ニック・キャシディ」
ニュージーランド/オークランド出身の25歳。
フォーミュラEドライバーの中には同じニュージーランド出身のドライバーであるミッチエバンスとブレンドンハートレーがいる。
2014年のマカオGPで初参戦ながら表彰台に登り印象的な結果を残した。
その後は日本でレースを行い、スーパーGTとスーパーフォーミュラに参戦し両選手権でチャンピオンを獲得した。
ジャガーレーシング
「ジェイミー・チャドウィック」
21歳のWシリーズチャンピオン。
彼女は以前にNIOフォーミュラEチームでテストを行ったことがあるが、今回はパナソニックジャガーレーシングでフォーミュラEに戻ってきた。
11歳でキャリアを始めたチャドウィックは、17歳でイギリスGTチャンピオンシップで優勝した最初の女性となり、更に最年少優勝ドライバーにもなった。
2018年にはイギリスF3で優勝し、2019年はWシリーズに参加し、チャンピオンシップタイトルを獲得した。
今最も勢いがある女性ドライバーである。
「サッシャ・フェネストラズ」
フランスで生まれたフェネストラズはアルゼンチンで育ち、カートシリーズを支配した。
その後はフランスF4、フォーミュラルノーに参戦して、ヨーロピアンF3での優勝も経験した。
2019年からは戦いの場を日本に移して、F3とスーパーGT300で戦った。
全日本F3ではチャンピオンを獲得し、今シーズンはスーパーGT500とスーパーフォーミュラを控えている。
ドラゴンレーシング
「セルジオ・セッテ・カマラ」
ブラジル出身のフォーミュラ2ドライバーであるセッテ・カマラは21歳。
F2には2017年から参戦しており、初年度から優勝する等して注目を集めた。
去年は2勝を獲得してランキング4位となった。
また、彼はマクラーレンF1チームのテスト兼開発ドライバーを務めている。
「ジョエル・エリクソン」
スウェーデン出身で21歳のジョエル・エリクソンは、フルタイムのテストおよびリザーブドライバーとしてジオックスドラゴンレーシングでルーキーテストに参加する。
ドイツADACフォーミュラシリーズからキャリアを始めた彼は、ヨーロピアンF3で結果を残した後、2018年にはマカオF3で2位表彰台を獲得した。
近年の2シーズンではBMWチームからDTMに参戦した。
彼は既にフォーミュラEでの走行経験があり、2018年のマラケシュインシーズンテストでヴァージンレーシングからフォーミュラEデビューを果たしている。
タグ・ホイヤー・ポルシェ
「トーマス・プレイニング」
タグ・ホイヤーポルシェのテストおよび開発ドライバーで、2019年9月にマラケシュで99Xエレクトリックのテストを担った。
昨シーズンのFIA WECでGTE-AMクラスから出場をしており、ADAC GTマスターズでのレース経験もある。
2020年はインターナショナルGTチャレンジとブランパン・エンデュランス・シリーズ(BES)に出場する。
「フレデリック・マコヴィッキィ」
マコヴィッキィはポルシェチーム2人目のルーキードライバーとして迎えられた。
2014年からポルシェのワークスドライバーとして2018年のニュルブルクリンク24時間で勝利を収め、IMSAチャンピオンシップで2つの勝利を獲得しており、主にGTレースで成功している。
2年前には、ジェームズ・ロシターと共にDSテチーターからフォーミュラEのシーズン中テストでデビュードライブをしている。
マヒンドラレーシング
「ピポ・デラーニ」
ブラジル人で主にWECやIMSAで耐久レースを戦ってきたドライバー。
世界3大耐久として知られるデイトナ24時間レースと、過酷なバンピーな路面で有名なセブリング12時間の両方レースで優勝した経験を持つ耐久レース界の実力者。
過去にはWECトヨタのTS050でテスト走行をしたこともある。
「サム・デジョン」
サム・デジョンは2017年からマヒンドラレーシングのシミュレーターおよび開発ドライバーを務めている。
ベルギー出身の彼は、過去にフォーミュラEルーキーテストに参加しており、マヒンドラの開発ドライバーとして作業を進めていく。
BMW i アンドレッティ
「ルーカス・アウアー」
BMWチームでDTMに参戦しているルーカス・アウアーは、マラケシュルーキーテストでフォーミュラEでデビューを果たす。
オーストリア出身で現在25歳の彼はヨーロピアンF3で複数の優勝をした後、DTMやADACのようなGTレースに戦いの場を移した。
2019年はレッドブルジュニアチームのメンバーとしてスーパーフォーミュラを戦い、ランキング9位となった。
「カイル・カークウッド」
若干21歳のカークウッドは2020年シーズンにBMW i アンドレッティチームに新たに加わり、チームオーナーのマイケル・アンドレッティのために北米インディ・ライツシリーズを戦う。
アメリカ国内戦のF4/F3/USF2000で勝率50%と圧倒的なパフォーマンスを発揮している若手であり、2019年に参戦したプロマツダシリーズでも第9戦から第15戦までの7連続優勝を含む年間9勝でチャンピオンを獲得した。
今アメリカで最も勢いのあるルーキードライバーである。
同じBMWチームのルーカス・アウアーと共にフォーミュラEデビューを果たしてBMW iFE.20を操る。
NIO 333
「アントニオ・フオコ」
イタリア出身で23歳のアントニオ・フオコは、2020年のフォーミュラEルーキーテストで再び姿を現した。
以前にジオックスドラゴンレーシングでルーキーテストを行った経験のある彼は、今回はNIO 333チームでテストを行うことになった。
フォーミュラルノー2.0およびフロリダウィンターシリーズでチャンピオンを獲得した後、フェラーリドライバーアカデミーの一員となり、F1シミュレーターチームで活動をしている。
「ダニエル・カオ」
NIO 333は新しい開発ドライバーであるカオをマラケシュルーキーテストに参加させた。
若手の中国人ドライバーである彼にとってはシングルシーターEVのパフォーマンス走行は初めての経験となる。
カオはアジアのシングルシーターシリーズでチャンピオンシップを獲得したことがあり、F4東南アジア選手権とアジアフォーミュラルノーカップで戦ってきた。
テチーター
「ニコラス・ラピエール」
フランス人で35歳と経験豊富なベテランがフォーミュラEのステアリングを握る。
耐久レースで数々の経験を持ち、ル・マンではLMP2クラスの多くの優勝を獲得している。
WECではトヨタチームでも戦った経験が長く、世界トップの耐久レースドライバーである。
「フェリペ・アルバカーキ」
ポルトガル出身のアルバカーキはWEC、IMSA、ELMS等の耐久レースで経験を積んできた。
シングルシーターでも上位カテゴリーまで進出したことがり、A1GPやGP2までステップアップを果たした。
ルーキーテストではダ・コスタのマシンのハンドルを握る。
日産
「ヤン・マーデンボロー」
元GTアカデミーの優勝者であり、フォーミュラカーレースに参戦した後ル・マンとスーパーGTに参戦した。
日本では日産チームからスーパーGTに長らく参戦しており知名度も高い。
2020マラケシュルーキーテストでは日本人ドライバーの高星明誠と並んでドライブする。
「高星明誠」
27歳の日本人ドライバーである高星明誠は、マラケシュルーキーテストで走る唯一の日本人ドライバーである。
全日本F3で2度のチャンピオンを獲得して、近年はスーパーGT500で戦っている。
マーデンボローと共に日産でテスト走行を行う。
メルセデス
「ジェイク・ヒューズ」
過去に複数年GP3に参戦し、現在はFIA F3選手権に出場して優勝を記録したシングルシーターレースメインの若手ドライバー。
今年、25歳の彼はFIA F3でHWA レースラボで参戦している。
「ダニエル・ジュンカデラ」
28歳のスペイン人である彼は2013年から2018年の間にメルセデスAMG DTMチームでレース出場した。
DTMでは3つのポールポジションを獲得し、2018年のブランドハッチでのレースで初勝利を獲得した。
DTMでメルセデスマシンに乗る前にも、メルセデスマシンでマカオF3、FIA F3ヨーロッパ選手権、F3ユーロシリーズでシーズンを戦い優勝を成し遂げた。
ベンチュリー
「ノーマン・ナトー」
ベンチュリーレーシングのリザーブドライバーを務めるナトーは、ルーキーテストに再び参加することになった。
27歳のフランス出身の彼はWECでLMP2を操り優勝を果たすと2019-2020シーズンではレベリオンからLMP1クラスに参戦。
シングルシーターの経験もあり、F4ユーロカップとフォーミュラ・ルノー2.0で好成績を出し、GP2では3シーズンを戦って3勝を挙げている。
「アーサー・ルクレール」
アーサー・ルクレールは、2017/2018シーズンのシミュレータードライバーとしてベンチュリーに参加して以来、いくつかのテストに参加してきた。
現在のフェラーリF1チームのドライバーであるシャルル・ルクレールを兄に持つアーサーは、兄とは違ったカテゴリーでレーサーとして懸命に仕事を行っている。
アウディ
「ケルビン・ファン・デル・リンデ」
南アフリカの23歳、デル・リンデは2015年からアウディスポーツカスタマーレーシングチームのメンバーである。
ADAC GTでドライバーズタイトルを2度獲得し、ニュル24Hやその他の耐久レースでも優勝経験がある。
非常に速い段階からGTレースに参戦しており、若くして多くの経験を積んできた。
フォーミュラEマシンは今回のルーキーテストでデビューとなる。
「マティア・ドルディ」
ドルディは2019年2月にアウディスポーツカスタマーレーシングチームのドライバーラインナップに加わり、Audi R8 LMSでスパ24Hなどを戦った。
21歳の彼は、フォーミュラEのシミュレーター作業を担当しており、レギュラードライバーであるダニエル・アプトとルーカス・ディ・グラッシをサポートした。