コンセプトからリアルへ アウディ e-tron
FIAフォーミュラE選手権で活躍するアウディ製電気自動車のデザインストーリーを探る。
今回はアウディe-tronのデザインストーリーを、デザイナーや関係者の人々と共に深く掘り下げていく。
そしてアウディ初の電気自動車がどのようにして誕生したのかを紹介する。
アウディが2015年のフランクフルトモーターショーで量産型の電気自動車を作っていくことをアピールし、電気自動車業界への進出を明らかにした。
そんなアウディは電気自動車の明るい未来をアピールした大手メーカーの1つだ。
この大きな発表の1年前には既に、アウディは「アウディスポーツ・アプト・シェフラー」としてFIAフォーミュラE選手権に参戦することを発表していた。
北京で開催された記念すべきフォーミュラE第1戦では、アウディのドライバーであるルーカス・ディ・グラッシが優勝し、アウディは初代フォーミュラEウィナーとして歴史に名を刻んだ。
この勝利でレース界と、量産型市販車の開発に向けて好調なスタートを切った。
アウディのエクステリアデザイナーであるスティーブン・ファール=ベッカー氏は、2018年の市販車発表会で語っている。
「重要な課題は、誰もが怖がらないクルマを作ることでした 。デザインが非常に過激になる可能性もありましたが、デザイナーとして、この計画が画期的なものであることを知っていたので、従来とは全く違うデザインにしたかったのです。」
デジタルウイングミラー、背面のリアライト、そしてSUVのプロファイルなど、2015年のコンセプトマシンで初めて採用されたデザインの多くを踏襲しながらも、市販モデルの「e-tron」は保守的なエクステリアデザインと新技術を融合させている。
e-tronのエクステリアデザインを担当したファー・ベッカー氏は以下の様に説明した。
「アウディ初の電気自動車ということもあり、お客様に『これは電気自動車だ』という感覚を与えたかったのです。フロントには、まるでシールドのような見た目をしたクローズドグリルを採用しています。そしてロッカーエリアでは、少し外向的なデザインにしました。」
車内にはe-tron用に95kWhリチウムイオンバッテリーが搭載されており、航続可能距離は500km弱。
加速性能も優秀で、時速100km/hまでわずか5.5秒。
リミッターである200km/hに到達できるAudiのオール電化SUVは、決して簡単な開発ではなかった。
2014/2015シーズンの初参戦以来、アウディはFIAフォーミュラE選手権で成功を収めてきた。
エースドライバーのルーカス・ディ・グラッシはフォーミュラEを代表するトップドライバーとなり、チームメイトのダニエル・アプトも長い間チームに在籍した。
ここ数年、より多くのモデルを披露してきたe-tronのラインナップを更に拡大したいと考えているアウディは、今後の市販車にフォーミュラEシリーズで学んだ数々の技術を取り入れていくことになるだろう。