【EVracing.jp】技術コラム 電気自動車のバッテリーについて
前回は自動車の「航続距離」と自動車に搭載出来る「エネルギー総量」についてお話しました。第2回の今回は、電気自動車のエネルギー源である「バッテリー」についてお話したいと思います。
電気自動車の課題であった航続距離の課題にバッテリーの技術は大きく寄与しています。
まずはじめにガソリン自動車の航続距離について考えてみます。ガソリンはエネルギー密度が非常に高く、ガソリン自動車は多くのエネルギーを搭載することが出来るため、航続距離は20年程前でも200km以上あり、最近ではエンジンの進化やハイブリッド技術等により、ほとんどの車の航続距離は600km程にまでなってきています。
しかし電気自動車で実用化に足る航続距離(200km以上)を実現するのは、非常に難しい課題がありました。それは搭載エネルギー容量を増やすことです。バッリテーはガソリンと比べてエネルギー密度が小さく、同等のエネルギー量を搭載しようとするとガソリンの数倍の重量となります。
エネルギー密度 | 充放電効率 | ※24kWh搭載した時の重量 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
鉛蓄電池 | 30~40 Wh/kg | 60~75 Wh/L | 70~92% | 600 kg | |||||||||||||||||||||||||||||||
ニッケル・カドミウム蓄電池 | 40~60 Wh/kg | 50~150 Wh/L | 70~90% | 400 kg | |||||||||||||||||||||||||||||||
ニッケル・水素蓄電池 | 30~80 Wh/kg | 140~300 Wh/L | 66% | 300 kg | |||||||||||||||||||||||||||||||
リチウムオイン蓄電池 | 160 Wh/kg | 270 Wh/L | 99.9% | 150 kg | |||||||||||||||||||||||||||||||
※ | それぞれ最も高いエネルギー密度の値で計算 |
仮にガソリン自動車に使用されている鉛蓄電池でリーフに搭載されているエネルギー量と同等のエネルギーを搭載しようとすると単純計算で600kg、ニッケル・水素蓄電池でも300kgの重量になります。しかし、近年2次電池の技術が進歩してニッケル・水素蓄電池の約2倍のエネルギー密度を持つリチウムイオン蓄電池が量産化されたことによりバッテリーの搭載重量は実用的な重量となり、車の総重量はガソリン自動車と同等までになりました。日産のリーフに搭載されているバッテリーを参考に考えますと、リーフのバッテリーには3.75V・32.5Ah(157Wh/kg)のセルを2並列 2直列に接続した7.5V・65Ah・3.8kgのモジュールが48個使用されているのでバッテリーのエネルギー総量は24kWh、総重量は182.4kgとなります(バッテリーパックのケース重量は含まず)。ガソリンは1ℓあたり重量は0.78kgなので42ℓ想定で32.9kgとなります。
搭載エネルギー総量 | 搭載重量 | エネルギー密度 | ||||||||||||||||||||||||
ガソリン | 403.5kWh (42ℓ) | 32.9kg | 12.3kWh/kg | |||||||||||||||||||||||
リーフのバッテリーパック | 24kWh | 182.4kg | 0.157kWh/kg |
バッテリーパックのエネルギー密度はガソリンに比べ大幅に低いですがこの値は電気エネルギーから運動エネルギーへの変換効率の良さや回生ブレーキシステムにより1kWhあたりの走行距離が大幅に優れているので実用化には十分な値です。本当の所はガソリン自動車と比べ絶対的な走行距離が劣るのが欠点ではありますが、ランニングコストの良さを考えると商品力としては非常に高いものと感じます。実用化に十分なバッテリー容量を普通車に搭載可能な重量で実現したことにより、電気自動車は市販化され、そしてモータを動力とするフォーミュラレースの実現にまで至りました。さらに2014年11月に、日立製作所からバッテリーのエネルギー総量を従来の2倍にする技術が開発されたと発表がありました。実用化は2020年頃とされていますが、この技術が広く普及すれば電気自動車の普及率向上に大きく貢献するかもしれませんね。
by Y.Hitofude