【EVracing.jp】技術コラム フォーミュラEの技術力の高さ

【EVracing.jp】技術コラム フォーミュラEの技術力の高さ

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2014年9月から世界で初めての電気エネルギーのみを動力源とするフォーミュラレース「フォーミュラE」が開催され、2014-2015年シーズンは年間10戦にて争われます。ガソリンエンジンのレースと比べると速さだったり、エンジン音だったりと見劣りする部分があると一部では言われていますがフォーミュラEには世界最高水準の電気技術が搭載されていると言っても過言ではありません。ここではフォーミュラEや電気自動車の簡単な技術的解説を交えながら、フォーミュラEに用いられている技術に対する理解を深めてもらえたらと思います。

第1回目は自動車の「航続距離」と自動車に搭載出来る「エネルギー総量」の現状についてお話したいと思います。電気自動車は100年以上も前に発明されたものであり、実は目新しいものでもありません。しかし、電気自動車の市販化が実現したのはここ数年の出来事です。なぜ市販化が実現できたのでしょうか?そこには電気自動車の最大の課題であった「航続距離」に対してある程度目途が立ったことが挙げられます。ではそもそも車が走るのにはどれくらいのエネルギーが必要なのでしょうか?

まず始めにガソリンタンク容量42ℓのガソリン自動車があると考えます。この42ℓのガソリンのエネルギー総量をバッテリーの容量に用いられるkWhに換算しますと403.5kWhとなります。

しかし、ガソリンエンジンの場合はこの403.5kwhがすべてガソリン自動車を動かすエネルギーとなるわけではありません。これはガソリンが持っているエネルギーであり、これをガソリン自動車を動かすエネルギーに変換するのがエンジンです。エンジンのエネルギー変換効率を約25%と考えると、ガソリン自動車を動かすエネルギーとなるのは約100kWhとなります。ガソリン自動車の燃費を17km/ℓとすると42ℓでの走行距離は714kmとなるので、100kWhで714km走行することが可能となります。つまりガソリン自動車が1km走るのに必要なエネルギー量は0.140kWhほどです。これは電気自動車でも同じことが言えます。(重量や変換効率によって1km走るのに必要なエネルギー量は変わってきます)

次に電気自動車に搭載されているエネルギー総量(バッテリー容量)をみてみましょう。日産リーフを例とすると、リーフのエネルギー総量(バッテリー容量)は24kWh、走行距離の公称値は228kmです。

搭載エネルギー総量 航続距離 1kWhあたりの走行距離
ガソリン自動車 403.5kWh 700km 1.73km/kWh
電気自動車 24kWh 228km 9.33km/kWh

※ 1kWhあたりの走行距離 = 航続距離 ÷ 搭載エネルギー総量

航続距離はガソリン自動車の方が圧倒的に長いですが、電気自動車の1kWhあたりの走行距離はガソリン自動車の約5倍にもなります。一般的にはガソリン自動車の効率は燃費で考えるので電気自動車の効率の良さはあまり話題に上がりませんが実は搭載エネルギー量から見ると電気自動車は高効率な乗り物なのです。

しかし、電気自動車には大きな課題があります。それはいくら高効率の乗り物であっても搭載エネルギー総量がガソリン自動車に比べて圧倒的に少ないことです。その結果、航続距離も短くなり、ガソリン自動車に慣れている人々から見ると電気自動車の優位性を感じることが難しいのかもしれません。

今回は、自動車を動かすのに必要なエネルギーと自動車に搭載出来るエネルギー量の現状についてお話しました。次回は電気自動車のエネルギー源について、技術的な課題等についてお話したいと思います。

by Y.Hitofude

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