コンセプトからリアルへ ポルシェ タイカン
FIAフォーミュラE選手権で活躍する最新の電気自動車のデザインストーリーを探る。
今回はポルシェ・タイカンのデザインストーリーを掘り下げていく。
ポルシェのデザイン責任者であるマイケル・マウアーはインタビューに答えた。
「タイカンのプロポーションは特別ユニークです。通常の電気自動車は、重くて大きなバッテリーが床に置かれているため、全体的に高くなっています。私たちはこれを受け入れたくありませんでした」
2015年のフランクフルトモーターショーで、ポルシェが電動スポーツカーを生産する計画を明らかにしたとき、世界は大いに注目した。
1931年以来、ポルシェは内燃機関の技術に磨きをかけ、その価値をレーストラックで何度も証明してきた。
そんなポルシェが内燃機関を持たない電気自動車を開発したことで、多くの人は衝撃を受けた。
“ミッションE”と名付けられた白いコンセプトカーは、モーターショーで台座の上に一台だけ置かれ、ポルシェの将来のビジョンを大胆に示した。
世界で最も有名な自動車メーカーのひとつが、電気自動車に乗り換えようとしていたのだ。
それから4年後、ポルシェは他の強豪メーカーと肩を並べてフォーミュラE選手権の初レースに臨んだ。
99Xエレクトリックがレースコースでデビューすると同時に、ポルシェ初の電動ロードカーが登場し、ポルシェの新しい電動時代の幕開けとなった。
マウアー氏は次のように述べている。
「これは最もエキサイティングでありながら、やりがいのある仕事の一つでした。ゼロからのスタートではありませんでしたが、このニューモデルは一目見てポルシェだとわかるようにしなければならないと思っていたからです。スポーツカーは、他の車に比べて車幅と車高の比率が劇的に変化します。そして、純粋な電気自動車のデザインを再定義したと言ってもいいでしょう」
人々には、道路を走るタイカンは未来的なように見えるかもしれない。
ボンネットとフロントウイングの特殊な形状が他のポルシェとは一線を画し、エアインテークとラジエーターグリルがないことから、タイカンは一風変わった存在となっている。
マウアー氏はポルシェとしてのデザインについて以下の様に語った。
「タイカンが通常のポルシェと同じ様なフォルムになるために、”フライライン”と呼ばれるルーフラインの下がり方と、リアの力強いショルダーにこだわった。これらはすべてのポルシェを特徴づける要素です」
FIAフォーミュラE選手権で早くも成功を収めたポルシェは、今後も電動化を継続し、内燃機関をバッテリーに切り替えるモデルが増えていくことだろう。
マウアー氏は最後に語った。
「私のビジョンは、タイカンが新しい時代の象徴的存在となり、純粋な電気スポーツカーの代名詞のようになることです。過去数十年にわたって911がこの役割を担ってきた。そして今後はタイカンがそれにとって代わっていくことになると考えている」