フォーミュラE 2021 ROUND15 ベルリン E-PRIX 決勝ハイライト
フォーミュラE 2021シーズン第15戦(最終戦)がドイツの首都であるベルリンで行われた。
最終戦
フォーミュラE世界選手権は、ベルリンE-Prixで2021シーズンを終える。
最終戦は第14戦・第15戦として開催されるダブルヘッダーであり、チャンピオンシップポイントを大量に加算することができる。
2019/2020シーズンでも最後の戦いがベルリンで行われており、その際は3つのレイアウトで6レースを行う過密スケジュールでの開催であった。
土曜日のレースを終えた時点では全くチャンピオンシップ勝者が分からない状況であり、10人以上のドライバーにチャンピオンの可能性が残された。これだけ多くのドライバーがチャンピオンをかけて戦う最終戦はフォーミュラE史上初であり、FIA世界選手権としても過去に類を見ない程となった。
サーキット
戦いの舞台となるのは、テンペルホーフ国際空港内を走る特徴的なレイアウトだ。この空港は既に2008年で閉鎖されており、現在は使われていない。
路面はアスファルトではなくコンクリートで作られており、普段の市街地コースとは違った特性の路面となる。土曜日に順走の基本レイアウトでの開催となり、日曜日は逆走レイアウトでの開催となる。逆走レイアウトは昨シーズンのベルリンでも2レースが行われており、そのデータを各チームは利用しながらマシンのセッティングをしていくこととなった。
予選
通常予選では相変わらずの接戦であり、トップから22位までが0.7秒以内のタイムを記録した。通常予選でトップタイムを記録したのはメルセデスのバンドーンだった。予選上位6台で行われるスーパーポールでは、2021シーズンの最後のポールシッターを決める戦いが行われた。ポールポジションを獲得したのは、通常予選でも最速を記録していたメルセデスのストフェル・バンドーンだった。
土曜日はメルセデス勢の2台が下位に沈み、チームランキングへの加算ポイントはなかったが、逆走レイアウトとなる最終戦では勢いを取り戻した。
2位には日産のオリバー・ローランドが入り、予選での速さを見せた。3位はジャガーのミッチ・エバンスとなり、チャンピオンシップ争いをしているライバルに対して最も有利な位置からのスタートとなる。4位はマヒンドラのアレクサンダー・シムズ。5位はNIOのトム・ブロンクビスト。6位はタイム記録ができなかったベンチュリーのノーマン・ナトとなった。
レーススタート
チャンピオンが決まる最終戦のスタートは大波乱で幕を開ける。
チャンピオン候補の中で最も有利なポジションからスタートすることになったジャガーのミッチ・エバンスだったが、スタートで発進することができずにホームストレートのグリッド上で動けなくなる。そしてコース上に止まっているエバンスのマシンを各車なんとか回避していたが、後方からスタートしていたモルタラは反応が遅れ、エバンスのマシンに突っ込んでしまう。その他のドライバーに更なる接触は発生せず、後続はなんとか2台を避けていったが、非常に激しいクラッシュにより両車はリタイヤとなった。3番手スタートのエバンスは、予選を終えた段階では最もチャンピオンに近かっただけに、チーム/ドライバーの落胆はかなりのものとなった。また、避けきれずに追突してしまったモルタラも自力チャンピオンが十分に可能なポジションに着けていたため、チャンピオン最有力勢が2台も消えることとなった。
残り41分頃にレースは再開され、隊列が整えられた状態でレーシングスピードへ加速していく。ところが、ターン1でアクシデントが発生する。なんと、チャンピオン候補の一人であるBMWのデニスがブレーキングでタイヤをロックさせバランスを崩し、ターン1外側のウォールに接触してしまう。マシンへのダメージは大きくデニスはここでリタイヤとなり、また一人チャンピオン候補が脱落していった。この時点でランキング上位5人でトップ10に入れているのは、ポイントリーダーのデ・ブリーズのみとなった。
アタックモード起動
残り37分を切ったところでレースは再開される。今回は前戦と違ったアタックモード形式が採用されており、4分と短いアタックモードを計2回使用できると言うものだ。前戦よりも短い時間設定であるため、アクティベーションゾーンを通過する際のポジションダウンが大きく影響することになる。
1回目のアタックモードを早々に起動した上位勢がまずはポジションを上げ始める。上位勢で最も早くアタックモードを起動していたナトが、残り30分頃にバンドーンをホームストレートで交わしてトップに立つ。2番手に下がったバンドーンはヘアピンで膨らみ、その隙にシムズにも抜かれて3位へ後退する。残り20分を切った頃にはアタックモード中のローランドにも抜かれて4位へする。チームメイトでチャンピオンシップリーダーのデ・ブリーズは逆に順位を上げてくる。
スタート順位を13番手だったが上位のアクシデントもあり、気が付けばウェーレインを抜かして6位にまで上がってきていた。アタックモードの恩恵を受けていたデ・ブリーズはそのまま前のマシンをオーバーテイクしていき、4位と好位置に着けた。その前ではターン5のインサイドに飛び込んだローランドがシムズを抜かして2位へ浮上する。
残り15分頃、ダ・コスタがディ・グラッシとウォールに挟まれてクラッシュし、コース上にストップしていたためセーフティカーが導入される。
フィナーレに相応しい激戦
残り12分頃、セーフティカーが解除されてレースが再開される。ナトを先頭にしたトップ争いはリスタート後すぐに激化するが全員ポジションを維持する。
次のラップでデ・ブリーズはファンブーストを使用してシムズに襲い掛かる。ターン1の飛び込みで両者は並んだまま進入していくが、デ・ブリーズがインサイドをこじ開けて前に出ることに成功する。しかし、バトルでタイムロスした2台をまとめてオーバーテイクしようとロッテラーが並びかける。続くヘアピンでインサイドにいたデ・ブリーズはシムズのアタックをブロックしようとするが止まり切れずに膨らみ、シムズが3位に戻る。そして立ち上がったデ・ブリーズとロッテラーに、バンドーンも並び3ワイドとなる。バンドーンはここでファンブーストを使用して前に出ようとするが、ロッテラーのフロントと軽く接触してあわや多重クラッシュとなるところだった。
激しいバトルが終わり、バンドーンが4位、ロッテラーが5位、そして危険回避のため汚れた路面を走ったデ・ブリーズはウェーレインに抜かれて7位へ後退した。4位のバンドーンはその後、最後のアタックモードを起動して加速し、残り8分を切ったところでシムズをパスして3位へ浮上する。表彰台戦線はある程度落ち着き、注目はチャンピオン間近のデ・ブリーズ付近の走りとなった。
残り時間20秒と、間もなくファイナルラップを迎える頃、4位のシムズにロッテラーが仕掛ける。ターン1でインサイドを奪ったロッテラーにクロスラインで対抗するシムズは、マシンを擦りながらヘアピンへ向かう。ヘアピンでインサイドのロッテラーはそのままオーバーテイクを成功させて4位へ上がる。ファイナルラップはシムズとウェーレインが5番手争いを行うが、その後方ではデ・ブリーズとバードが争う。バードはヘアピンの立ち上がりで並び、そのまま7位へ浮上する。デ・ブリーズはチャンピオンがほぼ確定しているため無理はせず、8位となった。
更にその後方では、ラストがベルニュに抜かして9位へ浮上する等、最後の最後まで多くのバトルが展開された。
優勝は、ベンチュリーのノーマン・ナト。土曜日にも速さを見せたナトは、2021シーズン最後のレースで見事勝利して最高の形でシーズンを締めくくった。
2位は日産のオリバー・ローランド。シーズンフィナーレで見事表彰台を獲得した。3位はメルセデスのストフェル・バンドーン。チームランキングへも大きく貢献し、デ・ブリーズと同等の素晴らしい走りを発揮した。4位はポルシェのアンドレ・ロッテラー。5位はマヒンドラのアレクサンダー・シムズ。6位はポルシェのパスカル・ウェーレインとなった。
シーズンポイントランキング
シーズンを終了して、2021シーズンのチャンピオンドライバーとチャンピオンチームが決定した。ドライバーズチャンピオンシップで1位を獲得し、見事にフォーミュラEタイトルを獲得したのはメルセデスのニック・デ・ブリーズとなった。また、チームランキングで1位を獲得したのはメルセデスとなり、ドライバー/チームの両選手権でタイトルを獲得した。