エクストリームE 2021 第1戦 サウジアラビア

エクストリームE 2021 第1戦 サウジアラビア

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サウジアラビアのアルウラで開催されたエクストリームEの開幕戦は、モータースポーツに新たな歴史を刻み始めることとなった。

Catie Munnings (GBR)/Timmy Hansen (SWE), Andretti United Extreme E driver switch

エクストリームEの記念すべき最初のレース会場となったのはサウジアラビアの砂漠地帯だ。
熱狂的な期待が寄せられていたエクストリームEが初めて正式なレースイベントとして開幕した。
今回のレースは「Desert X Prix」として開催された。
他のシリーズとは違う特殊なレースフォーマットを採用しているエクストリームEは、土曜日の予選タイムトライアルと日曜日のレースでチャンピオンシップポイントをかけて争う。
タイムトライアル、レース共にドライバー交代を1度行い、男女のペアが同じコースを1周ずつ走る。

予選は2回に分けて行われ、予選1回目はRXRのクリストファーソン/テイラー組がトップタイムを記録した。
2番手タイムはX44のローブ/グティエレス組が5秒差で獲得した。
3番手はアクシオナ・サインツXEのサインツ/サンス組となり、ラリーやラリークロスで世界を極めたドライバーが並んだ。

予選2回目も同じドライバー同士の争いとなったが、タイムではトップタイムを記録したRXRのクリストファーソン/テイラー組がドライバー交代エリア内の速度超過と判断されてタイムペナルティを課せられた。
これにより大きく順位を落として5位となり、変わって1位からX44(ローブ/グティエレス)、サインツXE(サインツ/サンス)、アンドレッティ(ハンセン/ムニングス)と続いた。

予選のアクション

2回の予選ではいくつものドラマが起こった。
まずはアンドレッティのムニングスが走行中に右リアタイヤがスローパンクチャーを起こしてその後バーストしてしまう。
それでもムニングスはアクセルを踏み込みフィニッシュラインまで全開アタックを継続した。
後方から上がる大量の砂煙はマシンのパワーを物語っていた。
ベローチェレーシングのサラザンはエクストリームEで初のリタイヤを記録してしまう。
今回のコース設定で最も急勾配な下り坂となる後の高速エリアでマシンのリアをスライドさせてしまい、姿勢を戻すことはできたが小さな砂丘に乗り上げてマシンが飛び上がり横転する。
サラザンは無事であったがそのままリタイヤとなってしまった。
ABTにもアクシデントが発生する。
2人目としてタイムアタックをしていたヒュルトゲンは、コース後半の下りの高速コーナーでリアタイヤをスライドさせてしまい、そのまま砂に足をとられてマシンが浮き上がり横転し、4回転半のロールをしてようやく止まった。
大クラッシュにも関わらずヒュルトゲンは自力で脱出して無事だったが、マシンは大破してしまった。
チップガナッシに乗るルデュックは、コースの序盤でパワーステアリングを失ってしまい、轍に大きく持っていかれるステアリングを押さえつけながらなんとかドライバー交代エリアまで帰ってくる。
一度マシンの電源を落として再起動をするものの症状は改善せず、チームメイトのプライスも重いステアリングと戦うこととなった。
それでもチェッカーまで気合で走り切りタイムを残した一幕があった。

レースセッション

日曜日のレースセッションは4つのレースが行われた。
ファイナルの前に行われる3つのレースはファイナル以外のドライバーの順位を決めるものとなっている。
セミファイナルはファイナルに進める2名のドライバーを決めるレースとなっている。
クレイジーレースはファイナルに進める1名のドライバーを決めるレースであり、敗者復活枠だ。
最後のシュートアウトは下位の7位から9位を決めるレースだ。

セミファイナル

セミファイナルでは予選で上位タイムを記録した、RXR・X44・サインツXEが一斉にスタートして最初の長い直線でスリーワイドとなった。
次のコーナーにそのまま入って行った3人の内、トップに立ったのはクリストファーソンだった。
後続の二人はクリストファーソンの煙に視界を奪われて大きくタイムを落とし、ドライバー交代時には数十秒の差がついてしまった。
ドライバー交代後も差が詰まることはなく、最初のポジションのままチェッカーを受けてRXRとX44がファイナルに進んだ。

Molly Taylor (AUS)/Johan Kristoffersson (SWE), Rosberg X Racing

クレイジーレース

クレイジーレースではF1王者のバトンに注目が集まった。
しかしスタートでアンドレッティのハンセンがリードを奪い、バトンは3番手でドライバー交代となる。
その後もポジションは変わらず、アンドレッティが逃げ切ってファイナルに進める1枠を勝ち取った。

シュートアウト

ある意味今回のレースフォーマットでは最も面白いレース展開となったのが、下位のチームで行われるシュートアウトだ。
セミファイナルやクレイジーレースでは、最初の直線からトップで次のエリアに入ったチームがそのまま逃げ切っており、実質レースを行っていたのは最初に1km程度だった。
しかしシュートアウトでは違った。
まず、チップガナッシは最初に乗るドライバーとして女性を起用していた。
序盤はリードを奪われても、後半で巻き返す作戦だ。
そしてその作戦通りにドライバー交代後に差を詰めていき、後半にはすぐ後ろにまで追い上げた。
しかし砂煙で前が見えない状態でアクセルを踏み続けたチップガナッシのルデュックは、前を走るABTのヒュルトゲンに激しく追突してしまい両者リタイヤとなった。
ただこのレースはファンの中でも開幕戦でのベストレースと言う意見があり、アメリカチーム及びドライバーらしいエンターテインメント性が高いレースとなった。
ドライバーのルデュックも攻撃性の高いドライビングに定評があるため、チップガナッシは今後のレースでも注目されるだろう。

ファイナル

勝者を決めるための最終レースには、アンドレッティ(ハンセン/ムニングス)・RXR(クリストファーソン/テイラー)・X44(ローブ/グティエレス)の3台が並んだ。
スタートでハンセンが先行し、ローブとクリストファーソンが追いかける展開となる。
勝負の直線後のコーナーはハンセンが先に侵入していくが、大外からクリストファーソンが速度を乗せ、立ち上がりで先行する。
ローブは2台の後方で煙に巻かれ大きくタイムロスして戦線離脱を余儀なくされる。
クリストファーソンに先行を許したハンセンも砂煙の影響で付いていくことができずに、3台はそのままの順位でチェッカーまで走り切った。
これにより、初代エクストリームEの優勝はRXR(クリストファーソン/テイラー)となった。

Timmy Hansen (SWE), Andretti United Extreme E, Catie Munnings (GBR), Andretti United Extreme E, Johan Kristoffersson (SWE), Rosberg X Racing, Molly Taylor (AUS), Rosberg X Racing, Cristina Gutierrez (ESP), X44, and Sebastien Loeb (FRA), X44, celebrate on the podium

21 04 06

関係者コメント

エクストリームEの創設者兼CEOであるアレハンドロ・アガグは以下の様にコメントした。

「私たちは何年もかけてこのプロジェクトに取り組んできましたが、ようやくすべてが揃いました。本当に私の想像を超えるものでした。もし私が完璧な週末の脚本を書いたとしたら、この2日間に見られたもの以上のものは思いつかないでしょう。これほどまでにエクストリームなレースを見たことはありません。この最初のレースは、エクストリームEの進化に大きな影響を与えるでしょう。私が誇りに思っている理由のひとつは、女性ドライバーが輝きを放つことができるプラットフォームを構築したことです。ここで彼女たちが見せてくれたものは、信じられないほどの才能と勇気にあふれていました。私は大満足です」

RXRの創設者兼CEOであるニコ・ロズベルグもコメントした。

「この優勝はとにかくすごいことです。この週末、本当に集中的にギリギリまで努力してくれたチーム全体に感謝しています。すべてがうまくいき、みんなが協力してくれました。また、モリーとヨハンが驚異的なドライビングを披露してくれました。厳しいコンディションの中、二人とも一歩も譲らず、信じられないほどの速さを見せてくれました。二人のパフォーマンスはとても刺激的で、見ていてとても誇らしく感じました。60秒のペナルティを受けた後に再び立ち上がり、最後は勝利を手にしたことは本当に素晴らしく、彼らは間違いなく勝者に相応しいと思います。チャンピオンシップ全体としても、良いスタートを切ることができたと思います」

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