【EVracing.jp】技術コラム パワーエレクトロニクス技術について
前回は電気自動車のバッテリーについてお話しましたが、第3回目はパワーエレクトロニクス技術についてお話したいと思います。
パワーエレクトロニクスという言葉と一度は耳にしたことがあると思いますが、これは半導体素子を用いた電力変換や電力開閉に関する技術を扱う工学であると定義されています。パワーエレクトロニクスの技術は電気自動車だけでなく、私たちの生活に絶大な恩恵を与えています。では、パワーエレクトロニクスの技術がどうすいごいのか?車のパワーエレクトロニクスの歴史はまだ浅いのでここでは鉄道の歴史と絡めてお話したいと思います。
現在では淘汰されつつありますが、以前は直流モータを用いた電車が主流でした。(電気自動車「たま」も直流モータを動力としていました)直流モータは印加電圧を変えるだけで複雑な制御を必要とせずに任意の回転数を得ることが出来ます。しかしこの印加電圧を変えるというのが大変でした。というのも架線の電圧(電源電圧)を変えることが出来なかったからです。そこでモータと直列に抵抗を挟み、抵抗で電圧降下させてモータに印加させる電圧を変える抵抗制御方式というものが考えられました。
この制御方式により、モータに印加させる電圧を変えることが出来るので、モータの回転数を自由に制御できるようになりました。しかし、この方式には大きな欠点がありました。フルパワーでモータを動かす時は電源電圧をそのまま印加すれば良いですが、パワーが必要なくなった時、モータに印加する電圧を下げなければなりません。直流モータの抵抗制御方式の場合は、電圧を降下させるために上述したように抵抗をを用います。直流モータに対して直列に抵抗を入れるとモータの印加電圧を下げることは出来ますが、抵抗にもモータ電流と同じ電流が流れるので、J(ジュール熱)=R (抵抗値)×I (電流値)×I (電流値) の熱量が発生し損失が生まれます。低回転であればあるほどモータに印加する電圧を下げるため、抵抗を増やさなければならず、入力電力に対する熱エネルギーの割合が増え、効率が悪くなります。そしてこの熱は使い道が無いので大気に放出していました。
電車は架線から電力を供給しているので、例え上記のように効率の悪いことをしていても架線の電力の供給がある限り、走行不能になることはありません。しかし、電気自動車は外部から電力を常時供給されるわけではないので、このような無駄なことは一切できません。同じことをするとすぐバッテリー残量がなくなってしまいます。
しかし、パワーエレクトロニクスの技術により、この無駄な熱エネルギーの損失を大幅に減らすことが出来るようになりました。次回はパワーエレクトロニクス技術を用いたモータの駆動についてお話したいと思います。
by Y.Hitofude