エクストリームE 2021 第4戦 Island X Prix ハイライト
イタリアのサルデーニャ島で開催されたエクストリームE第4戦は、アクシデントの多発する荒れたレースとなった。
今回の第4戦は、エクストリームEシリーズとしては初のヨーロッパ地域での開催となる。
「Island X-Prix」はその名の通り、「サルデーニャ島」で行われた。
戦いの舞台となるイタリアのサルデーニャ島は、地中海に浮かぶ大きな島であり、過去にはWRCの開催実績もあり、モータースポーツに対して関係の深い場所でもある。
しかし今回コースとして設定されるのはモータースポーツの世界では知られていない全く新しいエリアであるため、地の利は皆無となる。
サルデーニャ島は、西地中海で2番目に大きな島であり、モータースポーツイベントの開催地として広く知られている。
モータースポーツの伝統が色濃く残るこの地は、2004年から世界ラリー選手権(WRC)のカレンダーに組み込まれていることは有名で、X44のセバスチャン・ローブは4回優勝している。
また、サルデーニャ島では、1922年にコルサ・ジェントルマン・サルディというモータースポーツイベントが開催されたほか、ランチアがWRCのグループB時代に有名なS4や037などの最新モデルを披露したことでも知られるラリー・コスタ・スメラルダが開催された。
コース自体は堅めの土がメインとなっており、路面の細かいギャップをダイレクトに拾いやすい。
コース中盤には深めのウォータースプラッシュが複数あり、水たまりを派手に通過していく姿が見られる。
長い直線区間は少なく、道幅が狭いエリアが多いため、小さなミスが起きやすいコース設定となっている。
他のシリーズとは違う特殊なレースフォーマットを採用しているエクストリームEは、土曜日の予選タイムトライアルと日曜日のレースでチャンピオンシップポイントをかけて争う。
タイムトライアル、レース共にドライバー交代を1度行い、男女のペアが同じコースを1周ずつ走り、その合計タイムで争われる。
予選はタイムトライアル方式で2回に分けて行われた。
予選のアクション
予選1回目は11分5秒台を出してX44(ローブ/グティエレス)がトップタイムを記録した。
グティエレスがステージ途中でスピンを喫するが、タイムロスを感じさせない好タイムを記録した。
予選でのトップタイムが当たり前となってきたX44は今回も速さを見せる。
チャンピオンシップリーダーのRXR(クリストファーソン/テイラー)は序盤は好タイムを走行していたものの、ドライバーチェンジ後のテイラーがクレストを越える際にバランスを崩してマシンをスライドさせ、堅い路面の轍にタイヤを引っ掛けて横転するアクシデントを起こしてしまう。
タイムロスをしたものの、幸いマシンはすぐに走り出すことができ、そのまま走行を続けた。
最終的に32秒遅れの6番手タイムとなった。
続いて走ったチップガナッシ(ルデュック/プライス)もアクシデントが発生する。
1人目のプライスが高速セクションで左リアホイールをヒットし、衝撃でサスペンションを破損する。
ルデュックは走ることなくチップガナッシは予選1回目を終了した。
更に、次に走行したイスパノ・スイザ(ベネット/ゾンカ)もマシントラブルに見舞われ、タイムを記録できずに終わる。
X44に続いたのはサインツXE(サインツ/サンス)だった。
タイム差は12秒程度であり、やや差が目立つものの、安定した走行で2番手タイムを出した。
3番手タイムを記録したのはベローチェ(サラザン/エマ・ギルモア)だ。
ここ数戦は印象的なドライビングを見せるベローチェが上位に入って来た。
予選2回目もX44(ローブ/グティエレス)がトップタイムを記録して予選セッションを支配した。
タイムは10分45秒を記録し、1回目の自己ベストから大幅に更新してみせた。
タイムアタック中の映像は迫力満点のため、気になった方は予選のフル動画(後述)を見ていただきたい。
2番手にはチップガナッシ(ルデュック/プライス)が入り、本来の速さを久々に披露した。
3番手はRXR(クリストファーソン/テイラー)が入り、チャンピオンシップリーダーの意地を見せたが、トップのX44からは18秒差の大差を付けられた。
ステージ最終盤にスローパンクチャーに見舞われたシーンもあったが、タイムロスを最小限に抑えてタイムを記録した。
予選2回目もアクシデントは多く、予選1回目で3番手タイムを出していたベローチェ(サラザン/エマ・ギルモア)が右サスペンションを破損してリタイヤとなる場面や、サインツXE(サインツ/サンス)がマシントラブルで大きくタイムロスする等があった。
路面のギャップでマシンコントロールを失うドライバーも数人おり、スピンするマシンも散見された。
レースセッション
日曜日のレースセッションでは4つのレースが行われた。
ファイナルの前に行われる3つのレースはファイナル以外のドライバーの順位を決めるものとなっている。
セミファイナルは、セミファイナル1とセミファイナル2が行われ、ファイナルに進める各グループ上位2名のドライバーを決めるレースとなっている。
セミファイナル1は予選セッションの最終結果で1-5-6位のマシンが走り、セミファイナル2は予選セッションの最終結果で2-3-4位のマシンが走る。
クレイジーレースは予選下位だった7-8-9位で行われるレースであり、クレイジーレースの勝者はファイナルへ進出できるため、ファイナルは5台のマシンで行われることとなる。
セミファイナル1
セミファイナル1では、X44(ローブ/グティエレス)・アンドレッティ(ハンセン/ムニングス)・チップガナッシ(ルデュック/プライス)がレースを行った。
スタート直後に複数のアクシデントが起こる。
まず、最も右側からスタートしたアンドレッティのハンセンが、正面ルートへ直進しようとしていたチップガナッシのプライスと接触する。
これでプライスは減速を余儀なくされ、後ろへ下がる。
ハンセンはそのままX44のグティエレスと同じ左ルートへ進入していこうとするが、強引に左ルートへ入ったことでグティエレスの右リアへ強く接触する。
リアをプッシュされたグティエレスはバランスを崩してしまい、最終的にスライドしながらコースアウトする。
かなり荒い路面にスタッグして身動きが取れず、フロントフレームへのダメージも非常に大きいものとなってしまいリタイヤとなった。
ハンセンも再スタートをしたもののコースの途中でマシンを止め、チップガナッシだけが走行する状態となった。
早々に単独走行となったチップガナッシはそのまま安全に走り切りチェッカーを受けた。
X44とアンドレッティはリタイヤとなったが、X44が繰り上げでファイナル進出となった。
これにより、チップガナッシ(ルデュック/プライス)とX44(ローブ/グティエレス)がファイナルへ進むこととなった。
セミファイナル2
セミファイナル2ではRXR(クリストファーソン/テイラー)・ABT(エクストローム/クラインシュミット)・サインツXE(サインツ/サンス)がレースを行った。
序盤でトップに立ったのはRXR(クリストファーソン/テイラー)だった。
スタート後は最も有利とされている左ルートへ先頭で入り、ABTのエクストリームを引き離していく。
スタートで右ルートを選んだサインツXEのサインツは、合流ポイントでABTを抜かして2位へ浮上する。
ABTは前を走るマシンのダストで視界が遮られ、スローダウンを余儀なくされていた。
2位へ浮上したサインツはクリストファーソンを追いかけるが、その矢先トラブルが発生する。
ステアリングトラブルによって真っ直ぐ走ることすら困難な状況となり、ABTのエクストロームに抜かれて3位へ後退する。
トラブルは深刻であり、もはや戦える状況ではなくなったが、完走を目指してなんとか走行を続けるしかなかった。
レースはそのまま順位を入れ替えることはなく終わり、トップのRXRと2位のABTがそれぞれファイナルへ進んだ。
クレイジーレース
ファイナルへの進出権が与えられたクレイジーレースは、事実上の敗者復活枠となる。
クレイジーレースでは、JBXE(ハンセン/コツリンスキー)・ベローチェ(サラザン/エマ・ギルモア)・イスパノ・スイザ(ベネット/ゾンカ)がレースを行った。
まずトップに立ったのはJBXEのハンセンだった。
左ルートへ先頭で入って行き、リードを築いた。
2位には右リートの未開拓エリアを突き進み合流したベローチェのベネットが入って来た。
他のドライバーが使用していないエリアを通ったチャレンジングな動きだった。
そのままの順位でドライバー交代を行い後半戦へ突入する。
クレイジーレースは1台のみがファイナルへ進めるため、1位以外のドライバーは限界まで攻める走りをする。
ドライバー交代後に素晴らしい追い上げを見せるベローチェのサラザンは、早々にイスパノ・スイザのゾンカを捕らえに行く。
すぐ後方まで迫ったタイミングでゾンカのマシンの左フロントアームが折れ、コーナーを曲がり切れずにコースアウトする。
これでイスパノ・スイザはリタイヤとなり、変わって2位にベローチェが上がる。
攻めるベローチェのサラザンはトップのJBXEのコツリンスキーとの差を縮めていく。
しかし、コースも後半に入ったところで、なんとサラザンが横転してしまう。
路面のギャップを通過する際にリアが跳ね上がり、そのまま前転する形で横転しマシンが宙を舞った。
タイヤが外れるほどのクラッシュだったが、サラザンは大事には至らずマシンを降りた。
これにより、トップチェッカーを受けたJBXEがファイナル進出を決めた。
ファイナル
イベント勝者を決めるための最終レースには、X44(ローブ/グティエレス)・JBXE(ハンセン/コツリンスキー)・RXR(クリストファーソン/テイラー)・ABT(エクストローム/クラインシュミット)・チップガナッシ(ルデュック/プライス)の5台が並んだ。
スタートした直後、ABTは加速できずに早速遅れを取ってしまう。
他4台はポジションを争いながら最初に分岐に入って行き、X44は左ルートへ行き、その他の3台は右ルートへ進んだ。
右ルートの先頭を取ったのはチップガナッシのルデュックだった。
直線エリアの草が生えているエリアをそのまま突っ切り、高速で右ルートへアプローチしていった。
後ろにはJBXEとRXRが続く。
ルート合流でX44のローブが前に行くかと思われたが、なんとルデュックが先頭に立つ。
後ろではJBXEのコツリンスキーが路面のギャップでマシンコントロールを失いスピンを喫し、5位へ転落してしまう。
優勝争いをする予選最速組のX44のローブとチップガナッシのルデュックだったが、ローブのマシンの左フロントタイヤがパンクしてしまう。
そのまま走行を続けるが、その後すぐにアームが折れてしまい、ステアリングが効かなくなりリタイヤを余儀なくされた。
直接対決がなくなった優勝争いはそのままチップガナッシのルデュックが逃げ、ドライバーチェンジエリアまでの1周で後続に45秒以上の大差を付けた。
2位争いはRXRとABTが接近した状態で続く。
ピットアウト後しばらく経過した時、なんとトップ独走中だったチップガナッシの左フロントアームが折れている映像が映された。
レースを続行することができなくなったチップガナッシはそのままリタイヤとなり、目前に見えていた優勝は消えていった。
優勝は、アクシデントなく走り切ったRXR(クリストファーソン/テイラー)が獲得。
2位にはABT(エクストローム/クラインシュミット)が入った。
3位はチェッカーを受けられなかったものの、JBXE(ハンセン/コツリンスキー)となった。
ファイナル/セミファイナルを含めて、最終的にチェッカーを受けたマシンは9台中3台と言うサバイバルレースとなった。
ドライビングによるクラッシュでのリタイヤは少なく、パンクやアームの破損によるトラブルが多く、固い路面でのマシン及びタイヤの耐久性に課題が残る結果となり、来シーズン以降のマシン及びタイヤの改良に注目だ。
ランキング
※公式サイトの表記ミスにより、7位ベローチェと8位チップガナッシは順位が逆となっている。