エクストリームE 2021 第3戦 グリーンランド Arctic X Prix

エクストリームE 2021 第3戦 グリーンランド Arctic X Prix

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グリーンランドで開催されたエクストリームE第3戦は、グリーンランド初のモータースポーツイベントとなった。

KANGERLUSSUAQ, GREENLAND - AUGUST 29: Emma Gilmour (NZL)/Stephane Sarrazin (FRA), Veloce Racing, Laia Sanz/Carlos Sainz (ESP), Acciona | Sainz XE Team, and Cristina Gutierrez (ESP)/Sebastien Loeb (FRA), X44, at the start during the Arctic X-Prix at Kangerlussuaq on August 29, 2021 in Kangerlussuaq, Greenland. (Photo by Sam Bloxham / LAT Images)

エクストリームEの第3戦は、北極圏に位置するグリーンランドが戦いの舞台となった。
開幕戦のサウジアラビアは砂漠地帯でのレース、第2戦のセネガルは砂浜を舞台としたレースであり、どちらも温かい地域での開催であった。
そこから一転して、北極圏に位置するグリーンランドは非常に寒く、8月でも平均気温が10度を下回る程だ。
路面状況はマッドであり、雪解け水を含む砂地となっている。
前半の平地を過ぎると、湖のある丘まで一気に登り外周を回る。
そこから下ると平地に戻り、高速セクションが続くレイアウトだ。
高速セクションでは複数のジャンピングポイントがあり、ブレーキングやアクセルワークでの姿勢コントロールが求められる。
終盤には勝負所となる岩場エリアがあり、非常に大きな石や岩が集まっている。
オフロード様に作られているマシンやタイヤでも非常にダメージを受けやすいエリアであり、コースの最終盤に位置していることから最後の勝負所となるだろう。

他のシリーズとは違う特殊なレースフォーマットを採用しているエクストリームEは、土曜日の予選タイムトライアルと日曜日のレースでチャンピオンシップポイントをかけて争う。
タイムトライアル、レース共にドライバー交代を1度行い、男女のペアが同じコースを1周ずつ走り、その合計タイムで争われる。

予選はタイムトライアル方式で2回に分けて行われた。

予選のアクション

予選1回目は13分45秒台を出してX44のローブ/グティエレス組がトップタイムを記録した。
前戦でも予選で好タイムをマークしていたX44は今回も速さを見せる。
チャンピオンシップリーダーのRXR(クリストファーソン/テイラー)はクリストファーソンがドライブ中に複数回のシャットダウンを起こしてしまい大幅にタイムロス。
更にはテイラーが前半のジャンピングエリアでバランスを崩してマシンが一回転するクラッシュをする。
幸い大きなダメージはなく走行を継続できたが、最終的なタイムは8位となり厳しいスタートとなった。
X44に続いたのはABT(エクストローム/クラインシュミット)だった。
タイム差は僅か3.7秒であり、ABTも優勝戦線に名乗り出た形となった。
3番手タイムを記録したのはアグレッシブなドライビングに定評があるチップガナッシ(ルデュック/プライス)だ。
前戦は予選/決勝共にエンターテインメント性の高い走りを披露したチップガナッシは、ここグリーンランドでも健在だ。
一定区間のタイムで競うスーパーセクターエリアでも最速タイムを記録して速さを見せ、2戦連続のスーパーセクター獲得となった。
RXR以外のチームにもアクシデントがあり、JBXE(ハンセン/コツリンスキー)は終盤にある岩場エリアを通過する際にフロントタイヤが岩に弾かれ、ステアリングを破損して予選1回目をリタイヤした。

予選2回目はトラブルが続出した。
JBXE(ハンセン/コツリンスキー)はピットエリアに入る直前で電源がシャットダウンされて一時停止してしまう。
次に走行したイスパノ・スイザ(ベネット/ゾンカ)も駆動が切れストップしてしまい、そのままリタイヤとなった。
ABT(エクストローム/クラインシュミット)はリアタイヤを2本ともパンクさせてしまいピットでの交換を行うものの走り切ることはできなかった。
更にトラブルは続き、次に走行したチップガナッシ(ルデュック/プライス)はスタート早々に左リアが破損して走行不能となりリタイヤとなった。
予選2回目でトップタイムを出したのは14分26秒でRXR(クリストファーソン/テイラー)だった。
2番手にはX44(ローブ/グティエレス)が入り、チャンピオンシップを争う2台が並んだ。
3番手はアンドレッティ(ハンセン/ムニングス)が入り、僅差でJBXE(ハンセン/コツリンスキー)が4番手となった。

レースセッション

日曜日のレースセッションは4つのレースが行われた。
ファイナルの前に行われる3つのレースはファイナル以外のドライバーの順位を決めるものとなっている。
セミファイナルは、セミファイナル1とセミファイナル2が行われ、ファイナルに進める各グループ上位2名のドライバーを決めるレースとなっている。
クレイジーレースは下位の7位から9位を決めるレースだったが、今回からファイナルが5台で行われることとなり、クレイジーレースの勝者はファイナルへ進出できる。

セミファイナル1

セミファイナル1では、X44(ローブ/グティエレス)・サインツXE(サインツ/サンス)・ベローチェ(サラザン/チャドウィック)がレースを行った。
1周目はサインツXEのサインツが首位に立ちレースをリードする。
追う2台はどちらも接近して状態でレースを続け、サインツXEから少し遅れてピットエリアへ入って来た。
全車がドライバー交代を行い2周目に入って行き、X44はローブ、ベローチェはサラザンがステアリングを握る。
湖の周りの細い道を通るセクションでX44がベローチェの真後ろまで接近し、非常に狭いエリアでのオーバーテイクを成功させる。
これでX44は2位へ浮上し、トップのサインツXEを追う展開となる。
ローブのハイペースにより後半の高速セクションでX44がサインツXEを捕らえ、遂にトップに浮上する。
最終盤の岩場エリアを前にしてベローチェのサラザンは賭けに出る。
なんと大きな岩が多い誰も走っていないエリアへ高速で侵入した。
最後の賭けを行い一気に2台をオーバーテイクしたかに思われたが、やはりマシンへのダメージは大きく、ステアリングやタイヤを破損してしまい最後の直線を前に2台に抜かれてファイナル進出は叶わなかった。
トップはX44(ローブ/グティエレス)となり、2位はサインツXE(サインツ/サンス)となった。

セミファイナル2

セミファイナル2ではRXR(クリストファーソン/テイラー)・アンドレッティ(ハンセン/ムニングス)・ABT(エクストローム/クラインシュミット)がレースを行った。
序盤でトップに立ったのはRXR(クリストファーソン/テイラー)だ。
ポイントランキング首位のRXRは予選でトラブルに見舞われたものの、優勝候補筆頭であることは変わりなく、力走を見せる。
アンドレッティのハンセンもしっかりとマークし、チャンスを待ちながらレースを続ける。
湖の近くまできたところでRXRのクリストファーソンがチェックポイントのフラッグに接触してしまう。
これはペナルティの対象となり、ハンセンにとっては有利な展開となった。
平地に降りてから両者は激しいポジション争いを展開し、ほぼ差がないままピットへ入ってくる。
ドライバーチェンジを行い女性ドライバー同士の戦いへと移る。
中盤の平地セクションでアンドレッティのムニングスが攻め、RXRのテイラーをオーバーテイクしてトップに浮上しそのまま逃げ切って1位でゴールする。
ペナルティのタイム加算も行われるRXRは無理をすることなく2位を守る走りでチェッカーを受けた。

クレイジーレース

今回からファイナルへの進出権が与えられたクレイジーレースは、事実上の敗者復活枠となる。
クレイジーレースでは、JBXE(ハンセン/コツリンスキー)・チップガナッシ(ルデュック/プライス)・イスパノ・スイザ(ベネット/ゾンカ)がレースを行った。
3台共女性ドライバーがスタートを担当し、まずトップに立ったのはJBXEだった。
2位争いをしていたチップガナッシとイスパノ・スイザは、イスパノ・スイザがリードを奪い平地へと降りてきた。
追う展開となった3番手のチップガナッシは離されないようにペースを上げようとしていたところ、右フロントのステアリングを破損しタイヤが完全に制御不能となった。
これでファイナルへの進出は2台に絞られた。
JBXEはピットでペナルティの30秒ストップを消化しなければいけなかったものの、ハンセンは諦めずにイスパノ・スイザのベネットを必死に追いかけた。
ピットアウト後に20秒以上あった差は徐々になくなっていき、コース終盤で両者はお互いが見える距離にまで接近していた。
終盤の高速セクションに差し掛かった時、なんとトップのイスパノ・スイザがスローダウンする。
これにより接近していたJBXEが一気に追い抜きトップに浮上、そのままチェッカーを受けてファイナル進出を決めた。

ファイナル

イベント勝者を決めるための最終レースには、X44(ローブ/グティエレス)・JBXE(ハンセン/コツリンスキー)・RXR(クリストファーソン/テイラー)・アンドレッティ(ハンセン/ムニングス)・サインツXE(サインツ/サンス)の5台が並んだ。
第1戦ではファイナルが3台であったが、前回は4台、そして今回は5台のマシンがファイナルへ進める。
同時にスタートした5台は最初の高速セクションで激しいポジション争いを展開する。
湖に向かう丘の前のヘビーブレーキングまでは道幅が広いため、ここでトップに立ちたいドライバーは激しく争う。
トップ争いはX44・RXR・アンドレッティの3台がスリーワイドのままコーナーに侵入していく。
ここでトップに立ったのはX44だった。
2位はRXR、その後ろにはアンドレッティが着けた。
白熱の2位争いにJBXEも加わり、3台が接近した状態でピットエリアに侵入する。
そんな2位争いの3台に18秒差を付けてトップに立っていたX44であったが、ピットエリアに戻って来たマシンはなんとパンクに見舞われていた。
修理を行ったX44は大幅にタイムをロスして優勝争いから脱落し、変わってトップに立ったのはアンドレッティだった。
しかしピット前同様にアンドレッティ・RXR・JBXEは僅差でレースを進める。
湖の周りを抜け、開けた平地へ降りてきたアンドレッティとRXRの2台は優勝を争い激しくバトルを行う。
ジャンピングポイントでオーバーテイクを仕掛けたRXRのクリストファーソンだったが、攻めすぎたためかマシンに問題が発生しスローダウンしてしまう。
優勝は、ライバルのアタックを退けたアンドレッティ(ハンセン/ムニングス)が獲得。
2位には安定感があったJBXE(ハンセン/コツリンスキー)、3位はサインツXE(サインツ/サンス)となった。

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