フォーミュラE 2021 ROUND5 バレンシア E-PRIX 決勝ハイライト
フォーミュラE 2021シーズン第5戦がスペインのバレンシアで行われた。
完全常設サーキットを利用したE-PrixはフォーミュラEでは非常に珍しく、各チームは通常とは異なる戦術やドライビングを求められる。
戦いの舞台となるリカルド・トルモ・サーキットはフォーミュラEのプレシーズンテストでも利用されているため、今シーズンを戦う12チームすべてに走行データがある。
レイアウトはフルコースではなく、コース途中でショートカットを行う直角コーナーや、ホームストレート途中に設置されたシケイン等がある。
市街地コースと比べてアベレージスピードが非常高いため、特設のシケインを設置してバッテリーチャージができるようにしている。
また、今回も土曜日と日曜日にレースを行うダブルヘッダーでの開催となる。
トッププロが揃うフォーミュラEマシンで常設サーキットを走らせるだけあり、予選では非常に接戦になった。
スーパーポール進出者を決める通常予選では、全24台中23台がトップから1秒以内に入る混戦となった。
スーパーポールに進めた上位6台のタイム差は0.1秒程度しかなく、スーパーポール進出を逃した7番手のロッテラーはトップから僅か0.134秒差だった。
予選上位6名で行われたスーパーポールでは、ディフェンディングチャンピオンのテチータのダ・コスタがポールポジションを獲得した。
2番手には予選で速さを見せているメルセデスのデ・ブリーズが続いた。
3番手はBMWの若きエースとなったギュンター。
4番手は通常予選でトップタイムを記録したマヒンドラのリン。
5番手は日産のブエミ。
6番手はノータイムとなったメルセデスのバンドーンとなった。
日産のローランドは9番手となり中団からのスタートとなる。
しかしメルセデスの2台はペナルティを受けてしまいグリッドダウンとなる。
デ・ブリーズは前戦のローマでの接触によるペナルティで7番手スタートとなった。
バンドーンは予選で装着されたタイヤ番号が一致せず、最後尾からのスタートとなった。
ウェットレース
ドライで行われた予選とは打って変わって完全なウェットコンディションでのレースとなった。
その影響でセーフティカー先導でのスタートとなり、ローリングスタートとなった。
一列でスタートを切ったことで各車の間隔が空きターン1では大きなトラブルなくレースが始まった。
しかし、滑りやすいコンディションの影響ですぐにアクシデントは起こった。
5番手を争っていたナトとロッテラーは、並んだまま鋭角なターン9に入って行き、インサイドにいたロッテラーはブレーキングで減速が間に合わずに、4番手を走行中だったブエミに追突してしまう。
このアクシデントでブエミはリタイヤとなりノーポイントで第5戦を終えることとなった。
上位のアクシデントで一気にポジションを上げたのはペナルティでグリッド降格を受けていたデ・ブリーズだった。
アクシデントに絡んだ3台を一気に抜き4番手に浮上した。
激しさを増す上位争い
トップのダ・コスタが少し後続を引き離して行くが、2番手争いは3台の激しいバトルとなる。
上位のアクシデントを上手く利用してポジションを上げてきたデ・ブリーズは、3位のリンをアウトサイドから豪快にオーバーテイクしていく。
リンも負けじと食らいつくがデ・ブリーズはかなり良いペースを持っている様子だった。
最終シケイン前のターン12でギュンターのインサイドに入り2番手にまで浮上してきた。
3番手に落ちたギュンターに、今度はリンが猛烈にプッシュしてくる。
お互い表彰台をかけた激しいバトルを展開し、最終的にリンがバトルを制して先行する形となった。
表彰台圏内から落ちてしまったギュンターはローランドにもパスされて5位に後退してしまい、最後はブレーキングで大きくスライドしてコース外の砂地でスタックしてしまった。
これによりセーフティカーが入り一旦仕切り直しとなった。
残り6分のタイミングでモルタラにロッテラーが接触。
両者はランオフエリアまで滑っていき、このアクシデントで再度セーフティカーが出ることとなった。
バッテリー切れ
レース再開は残り数十秒のタイミングとなり、最後のスプリントレースが始まる。
しかし、セーフティカー中のバッテリー容量の減少が適応された段階で各マシンのバッテリー容量が非常に少なくなっていた。
そして残り数十秒でコントロールラインを通過していったため、最後の1周分を含めて合計2周必要となり、多くのチームが走り切れないバッテリー容量となっていた。
ファイナルラップに入るホームストレートで、トップを走り続けてきたダ・コスタもバッテリー残量が1%となりスローダウンする。
2位のデ・ブリーズはこの展開を想定していたかのように走り切れるだけのバッテリーを残しており、ストレート上でトップに浮上する。
スローダウンするダ・コスタにローランドとシムズも迫るが、両者はこの時既にバッテリー残量が0%であり、完走扱いにならないことが確定していた(セーフティカー中のバッテリー残量減算は表示上のみで、実際にバッテリー容量が引かれている訳ではないため走行は続けられる)
最後の最後で多くのマシンがバッテリー切れとなり、順位が全く異なる最終結果となった。
優勝は完璧なマネージメントを見せたメルセデスのデ・ブリーズが獲得した。
2位にはセーフティカー明けは15位にいたドラゴンレーシングのミュラーが獲得した。
3位はデ・ブリーズ同様にバッテリーを上手く管理したメルセデスのバンドーンとなった。
9位のベルニュまでが完走扱いとなり、フォーミュラEの歴史の中で最も予測困難なレース結果となった。