ダニエル・アプトの勝利への道
アウディチームのダニエル・アプトは、フォーミュラEチャンピオンシップに参戦するドイツ人ドライバー。
現在はフォーミュラEのベテランドライバーの一人となった彼が、今に至るまでを振り返った。
ベテランとなったダニエル・アプト
ダニエル・アプトはフォーミュラEで安定感に定評があるドライバーの1人であり、2014/2015年のフォーミュラE初シーズンからアウディスポーツチームで参戦を続けている。
彼はこれまで行われた全てのE-Prixに参加した4人のドライバーの1人であり、シリーズでも知名度が高いドライバーである。
ドイツメーカーのアウディと、ドライバー契約が更新されるかどうか不明だった時、アプトは「フォーミュラE」か「引退」の2択しか選択肢を用意していなかったことを明かした。
アプトはその考えを今シーズンのプレシーズンインタビューで以下のようにコメントしている。
「フォーミュラE以外のものは探していませんでした。この舞台では多くの楽しみが持っています。一歩も後退したくありません。フォーミュラEは、私が最も興味深いと思うレースであり、他のレースへの転向は考えていない。」
アプトは現在、フォーミュラEシリーズで最も有名かつ人気のあるドライバーの1人であり、ソーシャルメディアでも広く支持されている。
しかし5年前のフォーミュラE初年度では、アプトがフォーミュラE活躍することを予想していた者は少なかった。
より成熟されたドライベーへ
フォーミュラE参戦を開始して以来、アプトは多くのレースを戦ってきた。
アプトは数々の経験によって、自らがベテランドライバーへと成長できたと感じている。
「私はより成熟しました。フォーミュラEを始めたときの私はとても若かった。経験はあまり多くなく、F2参戦という経験だけが自信を持てる唯一のものでした。私はそれから多くの経験をして成長して、以前よりも洗練されたドライバーになっています。」
レーシングキャリア
アプトはADACフォーミュラからキャリアをスタートさせ、2年目にはシリーズチャンピオンを獲得。
すぐにドイツF3選手権に参戦をして、フル参戦1年目でシリーズ2位を獲得した。
翌年は順当にステップアップを果たしてヨーロッパF3にフル参戦をする。
4度の表彰台を獲得してシリーズランキングは7位となり上々の初年度を過ごした。
そのまますぐにGP3シリーズへの参戦を開始。
2度の優勝と7回の表彰台を経験してシリーズランキング2位でGP3シリーズの初年度を終えた。
そして彼は遂に、F1の直下カテゴリーであるGP2シリーズにフル参戦することになった。
若手ドライバーが一度は夢見る「F1ドライバー」へと確実に近づき、トップカテゴリーへの参戦の可能性はすぐ近くに来ている様に見えた。
しかし、2013年のGP2シリーズに挑んだアプトは、モータースポーツのボトムグループを初めて体験した。
ARTグランプリでGP2シリーズを戦った彼は、シーズン全体でマシンのセットアップに関するトラブルに苦しみ、表彰台に登ることなくシーズン22 位でフィニッシュした。
獲得ポイントは僅か11ポイントであり、シーズン22戦の中でポイントを獲得したレースは4回だった。
1年のみでARTグランプリを去り、次のシーズンではヒルマーモータースポーツからGP2に参戦する。
しかし、成績は大きく変わることはなく最高位は5位、シーズンでは27ポイントの16位でフィニッシュした。
フォーミュラEへの挑戦
GP2での敗北からアプトは多くのことを学び、大きな変化を求めていた。
丁度その頃、父であるハンス・アプトが2014年に新たに開始されるフォーミュラEシリーズのチームに関与することになり、アプトにチャンスが訪れた。
しかしフォーミュラEでは、プラクティス/予選/レース、これらをすべて1日で行う過密スケジュールであり、バッテリー残量に注意しながら、ミスの許されない狭い都市のサーキットを走らなければいけないという、今までとは全く異なる新しいものだった。
それでも彼は上手く環境に適応し、より角が取れたレーシングドライバーになった。
アプトは初年度の2015年に11位、2016年に7位、2017年に8位を獲得。
常に上位争いに姿を見せ、時折表彰台に登りチームにポイントをもたらした。
そして2018年は、メキシコで初優勝を獲得する。
それだけに留まらず、母国ドイツのベルリン/テンペルホーフ空港でのE-Prixでも優勝を達成してみせた。
こうしてフォーミュラEの勝者として記憶されたアプトは、今シーズンも変わらずにアウディチームの一員としてレースに挑んでいく。